【Think Fast, Talk Smart 米MBA生が学ぶ「急に話を振られても困らない」ためのアドリブ力】は、スタンフォード大学講師のマット・エイブラハムズが執筆した、即興的なコミュニケーションスキルを向上させるための、明日からでも使える実践的なガイド。本書は、特に予期せぬ状況での効果的なコミュニケーション方法に焦点を当てています。
即興で話すスキルを鍛えるための実践的なアプローチが学べる
あたふたして恥をかきたくない!人前で咄嗟に話すのなんて無理!と思うのは、あなただけじゃないですよ。
スタンフォード大学院に通うほど有能な生徒達だって、話すことに苦手意識を持っていて、なんとかしたいと思っているんですから。次に、本書のThink Fast, Talk Smart 米MBA生が学ぶ「急に話を振られても困らない」ためのアドリブ力の内容を要約し、解説していきます。
本書の要点
【Think Fast, Talk Smart 米MBA生が学ぶ「急に話を振られても困らない」ためのアドリブ力】の主な学びとして、次の点が挙げられます。
- 不安管理:即興的な発言時の不安を克服するための「不安対策プラン(AMP)」の作り方。
- マインドセットの変革:完璧主義を捨て、「平均点」もしくは「良い」レベルで十分だという考え方への転換。
- 構造化された思考:即興的な発言でも効果的に考えをまとめる方法▼
- 「何→それが何→それで何」
- 「4つのK」
- 「SOS」
- 「こ・れ・か」
などの型を使って即興で話を組み立てます。 - 焦点の絞り込み:聴衆の注目を集め、明確なメッセージを伝える技術。
- 状況別対応:雑談、祝辞、売り込み、質疑応答、フィードバック、謝罪など、様々な状況での対応方法。
本書は6つのステップ(気持ちを落ち着ける・自己を解き放つ・心構えを変える・耳を傾ける・話を構成する・焦点を定める)を通じて、会話のスキルを段階的に習得できるよう構成されています。また、「試してみよう」といった実践的な演習も含まれており、読者が学んだ技術を日常生活に取り入れやすいよう工夫されています。
原書はビジネスポッドキャストのランキングで上位に位置しており、国内外の幅広い読者層から支持を得ています。
誰におすすめできる本か?
【Think Fast, Talk Smart】は即興的なコミュニケーションに不安を感じる人々、特にビジネスプロフェッショナルや学生にとって、実践的かつ効果的なリソースとなっています。コミュニケーション学、心理学、社会学などの学術的知見に基づきながら、読者が具体的なスキルを身につけられるよう設計されている点が高く評価されています。
推奨読者としては、以下のような人々が挙げられます▼
- 口下手で急な質問に対応するのが苦手な人
- 会議で意見を求められると固まってしまう人
- プレゼンテーションの質疑応答が苦手な人
- 乾杯の挨拶や立食パーティーなどの社交的な場面が苦手な人
- 人前で話すのが嫌!だけど改善したい人
最もふさわしい対象者は、ビジネスプロフェッショナルや学生、特に予期せぬコミュニケーション場面に不安を感じる人々だと判断。スタンフォード大学のMBA生向けの人気講義を基にして製作されており、ビジネスシーンでの即興的なコミュニケーションスキル向上を目指す人々に特に適しています。
日常生活でのコミュニケーションに不安を感じる一般の人々にとっても、実践的で有用なテクニックを学べる内容となっています。コミュニケーションスキルの向上を目指す幅広い層の読者に適した本だと言えるでしょう。
即興力向上!覚えて役立つ
アドリブテクニックを紹介
本書ではコミュニケーションの数々のテクニックを紹介しています。その中から、あなたが覚えれば役に立つと実感できるアドリブテクニックを紹介しましょう。
不安対策プラン(AMP)
「不安対策プラン(AMP)」について、本書では次のように解説されています。
AMPは「Anxiety Management Plan(不安管理計画)」の略称で、コミュニケーション時の不安を管理するための個人的な戦略です。著者のマット・エイブラハムズは、この計画を「AMP」と呼んでいます。不安が実際にパフォーマンスを「amp up(高める)」可能性があると指摘しています。
AMPの作成と使用について、本書では以下のポイントが強調されています▼
- 症状と原因の両方への対処▼
- 症状は生理的なもので、体と心に現れます。例えば、深い腹式呼吸をしたり、大きくゆっくりとしたジェスチャーを使って話すスピードを落としたりすることで対処できます。
- 原因は心理的なもので、例えば目標達成への過度なプレッシャーなどが挙げられます。現在の瞬間に集中し、将来の否定的な結果を心配しないようにすることが重要です。
- 個人に合わせたテクニック▼
- AMPには、個人が効果的だと感じる3〜5つのテクニックを含めます。
- 具体的な例▼
- 著者自身のAMPは以下の3つのステップで構成されています:
a)話す前に冷たいものを手のひらに持つ(緊張からの火照りを抑えるため体を冷やす効果)
b)早口言葉を言って声を温め、現在の瞬間に集中する
c)「私は聴衆のためにここにいる。彼らを助けるためにいる」と自分に言い聞かせ、自己中心的な考えから聴衆中心の考えに切り替える - 実践と準備の重要性▼
- AMPは事前に準備し、練習することが重要。事前練習により、高ストレスの状況下でも効果的に使用できるようになります。
- 不安の正常化▼
- 不安を感じるのは普通のことだと認識することが重要です。多くの人が同様の経験をしており、それは人間の本能的な反応の一部であることを理解することで、不安に対処しやすくなります。
このように、AMPは個人に合わせてカスタマイズされた、実践的で具体的な不安管理ツールとして紹介されています。本書では、読者が自分自身のAMPを作成し、効果的に使用できるよう詳細なガイダンスが提供されています。
一番重要なマインドセットの変更
苦手意識ほど、人の行動を制限してしまい、本来の実力が発揮できません。あなたの有能さを発揮するならマインドセットの変更を学ぶべきです。
【Think Fast, Talk Smart】では、マインドセットの変更について以下のように解説されています▼
- 完璧主義からの脱却:
著者のマット・エイブラハムズは、即興的なコミュニケーションにおいて最も持続的で有害な神話のひとつは、「最高の、最も説得力のあるコミュニケーターは完璧に自己表現する」という誤解だと指摘しています。 - つながりを重視する:
完璧を目指すのではなく、聴衆とのつながりを重視することが重要です。著者は「Connection over perfection(完璧さよりもつながりを)」というフレーズを使用しています。 - TED Talkの例:
多くの人がTED Talkの発表者の洗練された様子を見て、完璧な表現を目指そうとしますが、実際には適切なアプローチではありません。 - 機会としての捉え方:
即興的な発言の場を脅威や挑戦としてではなく、つながりや関わりを持つ機会として捉え直すことが重要です。 - 自己評価の軽減:
過去の結果に感情的に執着せず、「次のプレー」に集中するマインドセットを身につけることが推奨されています。「次のプレー」に集中するマインドセットは、バスケットボールのマイク・シャシェフスキー(コーチK)の「next play(次のプレー)」という考え方に基づいています。 - 練習の重要性:
このようなマインドセットの変更は、繰り返しの練習、振り返り、フィードバックを通じて身につけることができます。
以上の点から、本書では完璧を目指すのではなく、聴衆とのつながりを重視し、各場面を機会として捉え、過去の結果にとらわれずに「次のプレー」に集中するマインドセットを推奨していることがわかります。即興的なコミュニケーションにおいて、より自然で効果的なアプローチを可能にします。
マインドセットの変更についてもう少し踏み込んで解説しましょう。と思ったのも、マインドセットこそ一番最初に学ぶべき肝心な要点だと私は判断したためです。
- 完璧主義からの脱却▼
- 著者は「そこそこできれば上出来」という考え方を推奨しています。
- 完璧を目指すのではなく、「平均点」を目標にすることで、プレッシャーから解放されます。
- つながりの重視▼
- 「Connection over perfection(完璧さよりもつながりを)」という考え方を強調しています。
- 聴衆のニーズ、知識、期待に優先順位をつけ、メッセージを調整することが重要です。
- 機会としての捉え方▼
- 即興的な発言を脅威ではなく、アイデアやイノベーション、信念を共有する機会と捉えます。
- オープンで受け入れる姿勢を持つことで、恐れられるタスクが魅力的な体験に変わります。
- 不安感への対処▼
- 感情面、行動面、認知面での不安症状に対する具体的な対処法を提供しています。
- 例:不安でなく興奮ととらえ直す、マインドフルネスの実践、深呼吸、動作のスピードを落とす、身体を冷やすなど。
- 文脈の理解▼
- 時間帯、感情的なトーン、会話の場所などの文脈を考慮することの重要性を説いています。
- これらの要素を理解し、適切に対応することで、コミュニケーションの効果を高めます。
- 構造化されたアプローチ▼
- 情報を構造化することで、聴衆の理解と記憶を40%も向上させられると指摘しています。
- 時系列や問題解決利益などの構造を活用し、メッセージの効果を高めることを推奨しています。
重複する内容も有りますけれど、上記したような具体的なアプローチを通じて、著者は即興的なコミュニケーションにおいて、より自然で効果的な方法を提案しています。
話す前の不安を「楽しみで興奮している」へ解釈し直すなんて、マインドセットの変貌の肝ですもの。楽しみで興奮していると思い直す理由は、身体の影響は不安のときも興奮のときも変わらないためです。
紹介したような実践的なテクニックと心理的なアプローチを組み合わせることで、読者は自信を持ってコミュニケーションを行えるようになることを目指しています。
理論編は奥深く、まだまだ解説し足りないと思いますが、あとはあなたが本書を読む理由づけのために、今の程度で抑えておきます。
理論編を学んでこそ活用できる
6つのシチュエーション
よくあるシチュエーション6つの乗り切り方や会話例を学べる「PART 2 応用編:6つのシチュエーション シチュエーションとして▼
雑談 | 「お互いの不安感の解消-共通基盤を作る」 |
祝辞・弔辞・紹介 | 「機会-関係-逸話」 |
売り込み・説得 | 「問題-解決策-利得」 |
質疑応答 | 「答え-例-価値」 |
フィードバック | 「気付き-考え-協力-効果」 |
謝罪 | 「責任-思いやり-措置」 |
については要約や細かく解説しません。
売り込み・説得の型の「問題-解決策-利得」について▼
- 問題:プレゼンテーションで緊張してしまう
- 解決策:事前にスピーチの練習をする
- 利得:自信を持ってプレゼンでき、聴衆を引き込むことができる
の解説の例文だけを読んでも、理解が深まると感じるとは思えないからです。長々と書いてしまっては要約になりませんし、そもそも要約解説すべきでない箇所と判断しました。
アドリブが効く会話の型を一番知りたいのでしょうけど、応用編を要約してしまって「型さえ覚えれば大丈夫」と錯覚し、実際は型通りに進めなくなりアドリブも効かない、結局は付け焼き刃になるかもと感じた理由がひとつ。理論編を深く学んで型を用いる背景を知ることで、効果的なコミュニケーションやスピーチなどができると想像したためです。
もうひとつは、6つのシチュエーションのついてはあなたが本書を読んで理解すべきという理由でもあります。
当サイトと同じように【Fast, Talk Smart 米MBA生が学ぶ「急に話を振られても困らない」ためのアドリブ力】の要約を書いている記事には「6つのシチュエーション」も要約しています。けれど、私から言わせると、無邪気に「害」を振りまいているだけと思っています。
だって、型さえ覚えれば大丈夫という甘い誘いは「毒」になってしまうから。読み手のあなたの今後を何も考えずに書いていると判断します。
あなたのためを考え、一番手っ取り早く力がつく最善の策と判断したので、応用編についての要約や解説はあえて伏せておきますね。良薬は口に苦しの思いからですよ。
本書【Fast, Talk Smart
米MBA生が学ぶ「急に話を
振られても困らない」ための
アドリブ力】の感想
アドリブで場を回せる明石家さんまのようなトークの達人にはなれなくても「なんとかその場を乗り切る会話や発言ができる」ように、様々な型と背景を学べる、ビジネスに役立つ良書と評価します。
コミュニケーション学や心理学、進化生物学、社会学、教育学の学術論文だけでなく、即興コメディアンや大統領選討論会のアドバイザー達からも得た知識を提供する著者のマット・エイブラハムズが「時間をかければ、私たち全員がその瞬間に強力なスピーカーになれる」と強調するのも納得できます。
人前で話すなんてとんでもない!と臆する気持ちは、世界的な有名大学に通う生徒であっても同じ(人前で話くらいならタヒんだほうがマシ!の意見は、笑いながら共感できました)ということで安心できましたでしょう。本書から学べるポイントは、アドリブで対応するには持って生まれた能力の差よりも「心構え」と「話す型」の記憶と「事前練習」の大切さ。後天的な要素が大いに影響するなら、何とかなると希望が持てますよね?
本書の欠点とは言えないまでの指摘として、洋書のためとにかく文章が長い!例え話を多用するため、著者の伝えたい内容を理解するのに助かるものの、やはり長いという感想。
それと、翻訳元の原書を読んでいないため、明言できませんが、この表現って無理矢理過ぎない?と感じる文章もあります。
例えば雑談で重宝する「何→それが何→それで何」という話し方の型。
「What — So What — Now What」フレームワークのことと想像できるが、言葉を工夫しすぎてわかり辛い。むしろ「提示─説明─提案」の方が意味が通る翻訳ではないのか、とする口コミ評価の書き込みがあるほどですから。
翻訳書らしい不思議な書き方に戸惑うでしょう(事実、翻訳で表現を工夫する必要があったと、翻訳者の見形プララットかおりもインタビューで苦労を語っているほどですから)
。
もうひとつ例をあげるなら、応用編で紹介されている、会話に求める要素として「こ・れ・か」の提案。「こ・れ・か」とは、こ=答え、れ=例、か=価値、の頭文字をあわせて「こ・れ・か」として記憶しやすいように提示してくれています。この語呂合わせは良い例。
けれども「きかいに感謝」という提案は、き=機会、は納得いくものの(「か」と「い」は本書を確認してほしい)、に=感謝としています。え?なんで「に=感謝」なの???と。
原書でどのような英文の頭文字で記述しているか不明なのでなんともいえないのですけれど、テンプレや語呂合わせで乗り切れるという安直な要望で本書を読まないように意識していただきたい。
第一部の理論編を精読することで、第二部の応用編を効果的に活かせるためです。会話の型は必要ですが、「なぜ型の理論が活きていくのか」という意味を考えないと、機能はするけど「その場しのぎの薄っぺらい会話の返し」だけになってしまいますもの。
賢く見られたいなら読むべきと推奨する
だってあなた、自信に満ち溢れるような賢くみられたいじゃないですか?
バカ認定されてしまうと、今後軽んじられる不名誉な扱いを受けてしまいかねません。あなたが能力に見合った扱いをされたいなら、【Think Fast, Talk Smart 米MBA生が学ぶ「急に話を振られても困らない」ためのアドリブ力】をしっかり読み込んで、うまく話すよりも相手との関係を構築するために誠実に話すことが、最良の答えと明言します。
コミュニケーションを上達させる唯一の方法は、反復、振り返り、フィードバックの3つを繰り返すしかありません。うまく話したい願望は理解できます。だからこそ、まずはマインドの変貌からがスタート。
想像してください。落ち着いて話すあなたの姿に、自信のある有能な存在として人々の目に写るはず。不安になって焦ることなく話すためにも、本書の理論編をとことん読み込むことが大切ですよ(とは言いつつ、長い文章を読むほど時間がないのでしたら、付録だけでも何度も目を通して会話の型を覚えてください)。