「アートなんて難しそう」「ビジネスには関係ない」 そのように思っていた私が、アートとの出会いでビジネスの視野が大きく広がった経験をお話しします。自論ですが、アートをビジネスに活かす方法についてです。
ビジネスにおいて、0から1を生み出すっていうのはなかなか難しいもの。ビジネスは正解のない挑戦。正解のないものについて考えるという思考こそ「アート思考」は使えるツールとは言えます。
けれどもアート思考の解説よりも、今回伝えたいのは、相手との話題作りや、今後の人生の楽しみとしての提案です。もちろんアート思考に関しても軽くお話します。内容としては > ビジネススキル向上ガイド のジャンルになるのでしょうけど、人生の余暇にも触れているのでコラムとして記述していきますね。
アートがビジネスに役立つ
3つの理由
▲上記の表の様に、3つの理由を中心に解説していきます▼
アートとビジネスの関係
経験上、ビジネスをやっておくのにおいて、アートが役に立ったという話をさせていただきます。私は学芸員でないことを理解しておいて読んでください。
まずアートというのは単なる趣味の世界だけでなく、仕事において役に立つということが分かります。文化的な教養は、ビジネスの世界では意外なほど重要です。なぜなら芸術は単なる知識以上の価値がありますから。
とはいえ、私は前衛芸術といえる現代アートの素晴らしさを理解できていません。
「この芸術作品が数億円もするの!?」と驚くものの、どうしてそのような莫大な価値があるのか理解できないタイプの私。バナナを壁に貼ったのがアート???とかいう感想ですから。
ネット上で取引されているNFT(Non-Fungible Token:コピーができない代替不可能なトークン)としての芸術作品は、投機対象になったりと、身近で現実的な印象を受けていません。トレンドとして情報は追いかけているものの、「高い=良いもの」という考えに疑問を感じています。
ビジネスコミュニケーションに
おけるアートの活用
現代アートのはしりとして代表的な、アンディ・ウォーホルやジャン=ミシェル・バスキア(以降バスキア表記)の良さも正直なところ分かっていません。
何度もバスキアの絵を見てるんですけど、落書きにしか感じられず、もてはやされる良さがまったく不明の状態。なので自分からお金を払ってバスキアの展覧会に行ったり、模造品の購入もしないでしょう。興味をもてませんから。
けれども、もし上司や取引先の商談相手が「バスキアが好き」だった場合だったらどうでしょう?
「いや僕は好きじゃないんですよね」って言うと、それで会話が終わってしまいます。
けれども「バスキアの絵を今勉強中です。あの力強い色調やタッチとか気になるんですよね」と、それっぽいことをわかってなくても言えばいいんです。むしろ分かったふうに喋らずに、興味はあるけど知識がなくて困っているように話すべきです。
そうすると「君、バスキアに興味あるの!」っていう展開になります。
もしかすると相手がマウントを取りたがるかもしれません。マウントなんて取られてもいいもんです、むしろ取らせましょう。目的は相手に気持ちよく会話させることですから。
向こうも気分よく「バスキアの良さはね……」みたいな形で喋ってくれます。
「○○さん 詳しいんですね。またバスキアについてお話しさせていただけませんか。自分もちょっと勉強中だから知りたいんです」といえば 、相手の知識欲を刺激することになりますし、会話も続きます。アートから始まる雑談は、仕事において役に立つものですよ。
作家をひとり知っておくだけで、コミュニケーションの幅が広がります。
アートは年齢や立場を超えた普遍的な話題になりますから。特にハイレベルなビジネス環境では、文化的な教養が信頼関係構築の重要な要素となることが少なくありません。
忠告として「中途半端な知ったかぶり」をしないこと。先ほど紹介したバスキアの話の様に、分からない場合は「初心者」と伝えておけばいいです(知っていても知らないふりしておくのが得策)。知っていると思っていたのに知らなかったでは、相手を失望させるだけでなく、信用も失うことになりかねません。
ビジネスの場面において相手に気持ちよく話させることが、商談や雑談では大正解ですもの。
リベラルアーツ強化としての
アート鑑賞のすすめ
先ほどのバスキア好きの例の様に、ビジネスの世界で成功を収めているエグゼクティブの中には、アートを積極的に取り入れている人が少なくありません。成功者と言える立場はなぜアートに惹かれるのでしょうか?
理由としてアートが現代ビジネスにおいて必要不可欠な「素養」を育むからです。その素養とは、まさにリベラルアーツの精神と深く結びついていると考えています。
リベラルアーツとは、古代ギリシャに起源を持つ教養体系で、人文科学・社会科学・自然科学など幅広い分野を学び、多角的な視点や批判的思考力を養うことを目的としています。現代でも、変化の激しい社会で生き抜くための普遍的な教養として見直されています。ゆえにアート鑑賞は、リベラルアーツを学ぶための重要な入り口となりえます。
悪い言葉で表現するなら、「成功者たちはバカを相手にしない」んですわ。
アート作品と向き合うことは、過去の偉人たちの思考や感性に触れることと言い換えられますね。
歴史、文化、哲学、倫理観など、幅広い分野の知識や思考方法に触れることで、物事を多角的に捉える視点、複雑な問題の本質を見抜く洞察力、既存の枠にとらわれない発想力が磨かれます。これらの能力は、現代のビジネスシーンにおいて、戦略立案、意思決定、イノベーション創出など、あらゆる場面で役立ちます。
例えば、ある絵画を見て心を揺さぶられたとします。その作品が描かれた背景、画家の意図、表現技法などを深く掘り下げることで、歴史や文化に対する理解が深まります。さらには作品からどのような感情やメッセージを受け取るのか、自分自身の感性と向き合うことで、自己認識も深まりますよ。アート鑑賞は単なる知識の習得に留まらず、感性を刺激し、自己成長をうながす体験ができるでしょう。
芸術鑑賞がイノベーションへ導く「アート思考」へと結びつくわけです。
イノベーションへ導くアート思考
アート思考とは、既成概念や固定観念にとらわれず自分の思考や感情から新たな価値を見出す思考法です。次の特徴があります▼
- 自己の興味・関心を起点に考える
- 常識や既存の枠組みにとらわれない
- 主観的な視点を重視する
- ゼロからイチを生み出すことを重視する
期待される効果
- 新規事業の立ち上げ
- イノベーションの創出
- 独自の競争優位性の確立
- 組織の創造性向上
- AIに代替されない人間らしい発想が可能
- 競合との差別化につながる
- 革新的なアイデア創出の期待
従来の新規事業開発は、市場調査やデータ分析が起点。一方、アート思考では個人の興味や違和感から出発するのが特徴。枠にとらわれない発想を生み出すべく、自分の感度を高めるために芸術鑑賞をおすすめするわけです。
アートは右脳を活性化し、創造性を高める効果があると考えられていますから。日々の業務で論理的思考を司る左脳ばかり使っていると、発想が硬直化しがちに。行き止まり感を解消すべく、休日に美術館を訪れたりすることで、感性や直感を司る右脳を刺激し、新たなアイデアやひらめきを得ることができます。気分転換だけでなく、ビジネスにおける課題解決や新しいビジネスモデルの創出に繋がる可能性がありますもの。
世界の一流の経営者やイノベーターたちが、多忙なスケジュールの中でも美術館に足を運び、アートに触れる時間を大切にしているのは、説明してきたような効果を実感しているからに他なりません。成功者は基本、アートを通して感性を磨き、思考を深め、未来を拓いていることでしょう。運でのし上がれた例外は取りあげませんよ。
人生の幅を広げる趣味のアート
さいごに趣味として「アート」に関心を持つべきでしょう。
仕事に邁進していた現役時代はともかく、定年後は何もすることもなく、1日公園に行って日向ぼっこしてる……のような人の話を聞きます。私はそのような老後を送りたいとは思っていません。なので何かしらの趣味は持ちたいものです。
できればお金のかからない趣味が望ましい。だからこそアートですね。美術品を買わないのであれば、これほどお金のかからない高尚な趣味はありません。釣りよりもお金がかかりませんから。
費用対効果の高いアート学習法
お金をかけずに芸術に触れる機会を増やす学習法を紹介しますね。
無料や低額で始められる方法
- 市立美術館の活用
- パブリックアート鑑賞
- HASARD等のオンライン美術館ツアー
- アートポッドキャストの視聴
- Google Arts & Culture
- 各美術館の公式アプリ
- アート関連SNSのフォロー
手軽にアートに触れたいなら、市営の美術館に行けばいいですもの。本物に触れることで、鑑識眼は磨かれていきます。
美術館は敷居が高いと感じるなら、街中でもパブリックアートの彫刻などの芸術に触れることもできます。
もしくは必要経費として画集ぐらいの購入はしておきましょう。
使わなかった分のお金は、書籍やオーディオブックなど、別のビジネススキルを磨く方面で使えばいいんです。
ファッションだってアートですよ。トレンドの服や髪型を追いかけることも、自分らしさに繋がりますから。
もっと芸術を身近に感じたいなら、四季の変化に意識を向けるべきではないでしょうか。
春は桜、秋は紅葉と、季節の移り変わりに気付くだけで、芸術に心を向けているのですから。感じたままを大切にする、自然を目にした感動も芸術のひとつです。
外に意識を向けるということは、時代の流れに注目するということ。趣味であったアートが、何かしらのビジネスチャンスになるかもしれませんよ?
まとめ
芸術は自分の人生を広げ、豊かにするのは良いことだと思いますね。話題の種類も増えますし、なんらかの形で「この絵画は、なぜこの構図が必要だ」とか「どうしてこのテーマを選んだのか」「作者が伝えようとしているメッセージは何なのか」と頭の体操にもなるので持ってこいです。
先ほど触れた、アート思考といえるプロセスは、ビジネスにおける問題解決やクリエイティブな発想にも活かせます。
考え方の枠だけでなく、生き方にも広がりをもたらすことはいいものですもの。
催しモノに魅かれるのもいいですけれど、美術館巡りも楽しいですよ。
ガラスの廊下でつなぐ独特な展示をする【十和田市現代美術館(青森県十和田市)】や、四季折々の景色を織りなす日本庭園が見ものの【足立美術館(島根県安来市)】、「世界で最も美しい美術館」として世界的な建築賞「ベルサイユ賞」を受賞した【下瀬美術館(広島県大竹市)】へ散策するのも面白いでしょうね。
あなたも一度、美術館に足を運んでください。今後の人生のためにも芸術に触れることは、思いもよらない展望を見せてくれるかもしれませんから。