変革期の波が、営業職を大きく揺さぶっています。ChatGPTをはじめとするAIの急速な進化は、「営業は不要になる」という声すら出てきていますもの。実際、従来型の営業の多くは、近い将来AIに置き換わるでしょう。
英国のオックスフォード大学でAIの研究を行うマイケル・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士の論文では、【10~20年内に労働人口の約47%が機械に代替可能である】と発表しています。
しかし、この荒波を乗り越え、むしろ飛躍のチャンスとできる営業職もいるはず。AI時代の分岐点について、私の考察を共有させていただきます。
営業職消滅の危機?
15年で60万人減少した衝撃事実
総務省統計局の労働力調査結果によると、2023年の労働者人口は約6740万人。労働人口の中で営業職に従事する人(販売従事者)は約810万人でした。調査の数字から、労働者の約12%が営業職で働いていることが明らかになりました。一方で、15年前の2008年には、労働者人口が約6385万人で、営業職に従事する人数は約870万人。つまり、労働者全体の数は現在より少ないにもかかわらず、営業職の人数は60万人も多かったのがわかります。そのことから、過去に比べて現在は営業職の重要度が減った(専属でなく兼任になった場合もあり。どちらにせよ重要度は低下している)といえるのではないでしょうか。
今後もAIやロボットによって代替され減少する可能性があります。現に残りの約810万人もの営業職が消滅の危機に直面しているのですから。あなたの職場でも、すでにその予兆が始まっているかもしれません……。
すでに始まっているAIによる代替
実は、私たちの周りではすでにAIによる営業活動の代替が静かに、しかし確実に進行しています。例を挙げると▼
- チャットボットによる24時間365日の顧客対応
- AIを活用したリード獲得と顧客分析
- 音声AIによる電話営業の自動化
- 商談スケジュールの自動調整システム
特に衝撃的なのは、ソフトバンクがAIシステム「Azure OpenAI Service(営業部門特化の生成AIシステム)」の導入により、70%以上という高い利用定着率を達成(通常の20-30%を大きく上回る)!したというニュース。AIシステム利用は、単なる効率化ではなく、人員削減の前触れかもしれません。
なぜ今、営業職が
危機に直面しているのか
この危機的状況には、3つの決定的な要因があります▼
- テクノロジーの指数関数的な進化
- GPT-4を始めとする自然言語処理の驚異的な進歩
- 機械学習による顧客行動予測の精度向上
- 自動化技術の低コスト化
- 企業の収益構造の変化
- 人件費削減の圧力増大
- デジタルトランスフォーメーションの加速
- コスト競争の激化
- 顧客行動の変化
- オンラインでの情報収集・購買の一般化
- 非対面コミュニケーションの受容
- セルフサービス志向の高まり
特に注目すべきは、GPT-4の登場がもたらした営業現場への影響です。従来、熟練営業マンの暗黙知とされていた「商談シナリオの組み立て」や「顧客の反応予測」までもが、AIによって高精度で実現可能になりつつあります。 特に衝撃的なのは、これらの変化が、ChatGPT発表を経て、わずか2-3年で10年以上の変化に相当するスピードで進んでいることです。
今のままでは、あなたの営業の仕事も、気づかないうちにAIに奪われてしまうかも……。 しかし呆然と立ち止まってはいけません。実は、危機とも思える状況は、同時にかつてない大きなチャンスでもあるのです。なぜなら……
AI時代の営業職二極化
AIに代替される低単価営業の実態
現在、以下の定型的な営業活動でAI置き換えが加速しています▼
- 単純な商品説明や価格交渉
- ルーチン化された見積もり作成
- 定期的な発注管理
- 基本的なカスタマーサポート
AIイノベーションの波は、すでに具体的な形となって私たちの目の前に現れています。特に注目すべきは、AIによる業務代替の「スピード」と「精度」です。
例として、食品や酒類などの卸売業を営むヤマエ久野の事例を詳しく見てみましょう。同社では、熟練担当者が商品の発注・在庫管理に約3時間を費やしていた発注業務を、AI搭載のシステム「自動チューニング機能」に置き換えました。その結果▼
- 1人あたり約3000アイテムの発注・在庫管理を効率化
- 熟練担当者の1日あたり約3時間の発注業務時間を約1時間半に削減(50%削減)
- 複数の異なる拠点(4拠点)にシステム適用が成功
さらに衝撃的なのは、AIの自動化により、発注の業務量の50%が消滅しただけでなく、販売エリアを拡大するため、発注作業担当者を集約しつつ作業の生産性を高めていく再配置までもが始まっているという事実です。
熟練担当者がAIで代替できたという意味を省みてください。
むしろ価値が高まる高付加価値営業
AIの台頭で、以下の領域での人間の価値が急上昇▼
- 戦略的パートナーシップの構築
- 複雑な課題解決型提案
- 新規市場の開拓
- クライアントの潜在ニーズの発掘
特筆すべきは、この「価値の逆転現象」が想像以上のスピードで進行していること。人がかかわるから価値がある、というわけではないということです。
海外企業の導入効果を見てみましょう。Salesforceの調査によると▼
- AIを導入した営業チームの83%が収益成長を達成(非導入企業は66%)
- AI導入企業の68%が人員を増加(非導入企業は47%)
- AI活用チームの営業担当者は、過重労働を感じる確率が2.4倍低下
変化を牽引している要因は、「人間にしかできない価値提供」の重要性の高まりです。在庫管理など、人間でなくてもできる業務はAIに移行させ、戦略的な思考、複雑な問題解決、対人関係の構築に注力することを企業が求めていますから。
- 経営課題の深掘り
- 業界トレンドの先読み
- イノベーション提案
「この営業の方だから、この商品を選んだ」—客は売る人を信用して買う。
決め手は人だと言える、信頼を勝ち取れる営業職だけが、AI時代を生き抜くことができます。特に以下の要素を持つ営業職は、むしろAI時代に価値を増すと考えられます▼
- 深い専門性と問題解決力
- 高度な感情知性(EQ)
- 創造的な提案力
- 長期的な信頼関係構築能力
私の聞いた話では、巨額の契約が成立したとき、最後の決め手となったのは「あなたの誠実な対応に信頼感を覚えた」という言葉でした。繰り返しますが、客は売る人を信用して買う、信頼関係の構築は、いくらAIが進化しても容易には代替できません。
二極化時代を生き抜くための選択
選択肢は2つ:
- AIに代替される側
- 従来型の定型業務に固執
- スキルアップへの投資を怠る
- 変化への抵抗
- 高付加価値人材への進化
- AIを活用したスキル習得
- 専門性の深化
- コンサルティング能力の向上
「最も強いものが生き残るのではない。最も変化に敏感なものが生き残る」
進化論で有名なダーウィンの言葉は、まさに現在の営業現場の現実を表しています。 では、具体的にどのようにして変化の波に乗ればよいのでしょうか?
AI時代に勝ち残る方法
高付加価値営業になるためのスキル
まず最初に、米調査機関の発表の、厳しい現実を直視するデータが。
2021年時点で商品を購入する人(買い手)は購買プロセス全体の3分の2以上をリモートでの対話、またはデジタルを通じたセルフサーブで取捨選択できることを望んでおり、人が介在する営業を好まない買い手が増加していることが分かっています。デジタルシフトにより対面とデジタルを組み合わせたハイブリッドセールスがますます進むと予測される中、営業に関わるタスクの約3分の1は自動化できることが指摘されています。
特に、定型的な商品説明や単純な受注業務を主とする営業職は、存在基盤を根底から揺るがされることでしょう。
例えば大して違いのない「ウォーターサーバー」なんて、ネットやTVショッピングで注文できればいいもの。だけれど今のところ、催し物などで対人営業していますね。この手の「低額な商品及びサービス」を営業する人は、生き残れるかといったら……。程度の低い営業の方は、淘汰される運命にあるでしょうね。
重要なのは、「淘汰」を恐れるのではなく、むしろ自己革新のきっかけとして捉えることです。嫌でも意識変換すべきです!
AI時代を生き抜く営業パーソンの必須スキル3つをまず確認しましょう。
- ビジネス課題解決力
- 業界全体を俯瞰する視野
- 財務・経営の基礎知識
- 戦略的思考力
- 業界知識の体系的な学習
- 関連資格の取得
- 高度なコミュニケーション能力
- カウンセリングスキルの習得
- 異文化理解力の向上
- エグゼクティブとの対話力
- 感情知性(EQ)の活用
- ストーリーテリング力
- デジタルリテラシー
- データ分析スキル
- AI活用能力
- AIツールの効果的な活用方法の習得
- データ分析スキルの向上
これらのスキルは、単なるチェックリストではありません。実際の現場で、どのように機能し、なぜ重要なのか、具体的に見ていきましょう。
メール業務といった仕事は、生成AIによって入れ替わろうとしています。広報業務のブログなど、掲載する画像はもちろん、文章ですら生成AIに任せている会社も存在します。もちろんファクトチェックは行っての公開ですから。けれども信用に足るAIに業務を任せっきりになる未来は、そう遠くありませんよ。
AIを味方につける具体的な方法
AIの具体的な活用法を3つのカテゴリーで整理します▼
- 商談準備の革新
- AIによる市場分析レポート作成
- 顧客企業の最新ニュース自動収集
- 最適な提案資料の自動生成
- 顧客対応の質の向上
- 会話内容のリアルタイム分析
- 最適な返答提案
- 感情分析に基づくアプローチ調整
- フォローアップの自動化
- パーソナライズされた提案書の作成
- 最適なタイミングでの接触
- 顧客の行動予測に基づく提案
これらの方法は、すでに多くの現場で革新的な成果を生み出しています。 以降で紹介する、保険会社の事例は、業務の効率化だけでなく、保険料の提案までもするようになっていますから。
人間にしかできない価値提供とは
AIには決してできない、人間の営業パーソンにしかできない3つの価値があります▼
- 創造的な問題解決
- 前例のない課題への対応
- 複数の要素を組み合わせた革新的な提案
- 状況に応じた柔軟な判断
- 信頼関係の構築
- 感情的な繋がりの形成
- 直接会うことでの親密度の積み重ね
- 暗黙知の共有
- 長期的なパートナーシップの醸成
- 価値の共創
- クライアントと共に新しい価値を生み出す
- 業界の常識を超えた発想
- Win-Winの関係構築
人間の営業担当者の真の価値は、単なる商品説明や提案にあるのではありません。
それは▼
- 相手の立場に立って考え
- 創造的なソリューションを生み出し
- 共に成長するパートナーシップを築く
という、AIにはできない「人間ならでは」の価値創造にあるのです。
AIは確かに優秀です。しかし、私が最も信頼するのは、顧客の課題に真摯に向き合い、時には厳しい意見も言ってくれる、人間の営業パーソンです。なぜなら「AIは道具」ですもの。道具を使いこなして、人間にしかできない価値を提供できる人材になることが、営業パーソンの生き残る道なのですから。
次は、私の信じるの理論【AIは人間の補佐】を実践に移した具体的な成功事例をご紹介します。
AI活用の成功事例5選
2023年のJ.D. パワー ジャパンの情報によると、AIチャットボットで、基本的な問い合わせ対応を自動化し、顧客満足度を前年より11ポイント向上させました。とはいえ用件解決状況の「完全に解決した」と回答した割合は6割を下回っています。
今後AIチャットボットがさらに進化すれば、創造的で付加価値の高い業務に注力できるようになります。つまり、AIを「脅威」ではなく「最強の協力者および補佐」として活用できるかどうかが、生存競争を勝ち抜くカギとなるのです。
先ほどのヤマエ久野とは別の企業の実例を挙げていきましょう。
具体的な企業の成功例
- 三菱UFJ銀行の事例
- 提案書データレイクシステムを構築し、組織内のナレッジ共有を効率化
- AIによる自動マスキングやタグ付け機能で、セキュアかつ効率的な情報共有を実現
- 営業担当者の提案力向上と業務効率化の両立に成功
- 東京海上日動火災の効率化
- 事故対応における顧客応対文面作成業務で50%の処理時間削減
- みずほ銀行の事例
- 営業部門のセールス力向上
- 企画部門での業務効率化を実現
- データ分析による効果的な営業戦略の立案が可能に
- 日本生命の改善
- AI-OCRの導入により契約申込書類の処理コストを40-50%削減
- 楽天生命保険のデータ予想
- AIが入院リスクを予測し、引受査定を自動化・効率化
保険や銀行といった、営業の顧客対応の業務をAIに委託しています。新しい発想や提案などは人間の仕事のまま、時間のかかっていた雑務をAIに任せて時間削減ができた成功例と言えますね。
成功のための実践ポイントと
失敗から学ぶ教訓の活かし方
AI導入の成功への重要なポイントは3つのカテゴリーに分類されます。
- 段階的な導入のステップ
- 小さな成功体験から始める
- チーム全体での学習と改善
- 抵抗勢力への丁寧な説明と巻き込み
- 人材育成の施策
- AI活用スキルの定期的なトレーニング
- 成功事例の共有会の実施
- メンター制度の導入
- 評価制度の改革
- AI活用度の評価項目化
- 質的な成果指標の重視
- イノベーション推進への報酬
また、避けるべき失敗パターンとして:
- AIへの過度な依存
- 人間的な価値の軽視
- 導入後のフォロー不足
デメリットの面もお伝えしておかなければなりません。当たり前ですけれど、まだAIは万能ツールではないことを理解すべきです。絶対に人間の目でチェックをしておきましょう。
また、AI導入で、新しい操作など覚えるために、一時的に生産性が下がるといったデータも報告されていますから。
だから一度失敗したくらいで「やっぱり人間じゃないとダメなんだ」と諦めないこと!最初は失敗するでしょう。けれど、日進月歩の進化を見せるAI技術は、ひと月で飛躍的革新を遂げているのも珍しくありません。AIニュースを注目しながら、自分の業務に何を活かせるか、様々な挑戦をしてください。
明日から始めるAI時代の準備
即実践可能な3つの対策から、長期的なキャリアプランまでを段階的に整理します。
- すぐにできる対策(初期30日)
- AI基礎力の構築(1日30分)
- デジタルツールの導入(1週間以内)
- 意識改革とマインドセット(即日開始)
- 半年以内の習得スキル
- 第1-2ヶ月目:基礎固め
- 第3-4ヶ月目:実践力強化
- 第5-6ヶ月目:応用と発展
- 長期的なキャリアビジョン
- 1年目の具体目標
- 2-3年後のポジション
- 5年後のキャリアパス
AI利用に挑戦した営業職の物語
ここは【もしも】の話をしますね。とはいえ、ありえない話でなく、すごく現実的な例え話を。ある営業マンの成功体験というifの物語を見ていきましょう。
山田さん(仮名)は、50代のベテラン営業マン。デジタルツールには苦手意識があり、最初は「自分には無理だ」と考えていました。対面こそ営業だ、という経験が強かったためです。しかし、ある出来事をきっかけに、その考えは大きく変わります。
最初の一歩:小さな成功体験
山田さんは、まず日報作成にChatGPTを活用することから始めました。最初は慣れるまで時間はかかったものの「今まで30分かけていた作業が、わずか5分」で完了。しかも、想像していた以上に分析的で説得力のある内容に仕上がり。「こんな簡単なら自分にもできる……!」この小さな成功体験が、次のステップへの自信となりました。
実践的なスキル構築:90日の変化
フューショットプロンプト?API?など、ChatGPTに触れなかったら知らないままの知識を徐々に覚えていきました。
次に、CRMツールの活用を開始。当初は戸惑いもありましたが、若手社員からサポートを受けながら、着実にスキルを身につけていきました。新人時代にExcelやWordの扱いを覚えていた頃を思い出すような、新鮮な体験で心躍るものでした。好奇心の大きさが、社内リスキニングの後押しになったのも良かったといえます。
具体的な変化
- 顧客データの一元管理により、商談準備時間が60%短縮
- AIによる分析で、見込み客の優先順位付けが的確に
- オンライン商談の活用で、移動時間を大幅削減
長期的な成長:1年後の姿
最も印象的な変化は、山田さんの仕事の質的転換です。
Before:
- 日々の商談に追われる毎日
- 経験と勘に頼った営業活動
- 限られた商談機会
After:
- データに基づく戦略的アプローチ
- AIと人間力の相乗効果
- 商談件数2倍、成約率35%向上
さらに、山田さんは社内でAI活用のメンターとして認められ、後進の育成も任されるようになりました。自由閲覧できる社内ドキュメントに「AIの使い方」を投稿していても、見る人も限られていたため、会社が指導する経験者を求めたからです。
「最初は不安でしたが、一歩踏み出してよかった。むしろ、これまでの経験とAIを組み合わせることで、新しい可能性が広がりました」
AI初心者だった山田さんの言葉は、まさにAI時代における理想的な変革の道筋を示していると感じられるでしょう。今までの業務経験を活かすために、AIを補佐として大いに利用することこそ、今後の営業職の生き残りの道ですから。
あなたの立場になって、再度お読みください。
AI時代の営業職は
「脅威」から「チャンス」へ
今までのニュースから分かるように、営業職の未来は厳しい二極化の道を辿るでしょう。しかし、時代の変革期こそ、真の実力が問われる時代となります。生き残るのは、変化を恐れず、常に自己革新を続ける者のみです。
私は最近、70代の母の会話で重要な気づきを得ました。デジタル機器の使用に不安を感じていた母が、対応した営業の方との対話を通じて少しずつ新しい技術に親しんでいく姿は、人間の営業にしかできない価値提供の証と感じましたから。
AIの変革期を乗り越え、選ばれる営業として生き残るために、私たちは日々の自己研鑽を怠ることはできません。しかし、未来には、AIと人間が見事に調和した、より創造的で価値あるビジネスの世界が待っているはず。今スマートフォンを扱う様に、AIも普段使いになる世界が待っていますから。
変化は確かに不安を伴いますよね。しかし、それは同時に大きなチャンスでもあります。今この記事を読んでいるあなたは、すでに変革への第一歩を踏み出しています。まずはAIを補佐としての位置づけから始め、次は世界を拡張するツールとして活かすべきです。変革期の戸惑いを乗り越え、新時代の営業のあり方を共に創造しましょう。
明日から、具体的なアクションを始めませんか?AI時代の営業革命は、すでに始まっているのですから。